『邪魅の雫』感想

やっと出ました京極夏彦先生の最新作『邪魅の雫
講談社誤報がちょうど一年前だったので、その誤報どおりの日付で出すように、という先生のお達しがあったのじゃないかと、邪推してしまいます(笑)
ネタバレ全開なので、続きからドウゾ〜。


まず、今回も特に難解な謎はなかったように思います。
京極作品を読みなれている人であれば、視点のズレがポイントなのは周知のこと・・・たぶん(笑)
整理していけば、勘違いで殺されている人がいるのが判りますし、誰かが嘘ついているのも透けて見えます。
そういう意味では、『姑獲鳥』や『魍魎』、『狂骨』のような、なんだってー!?というインパクトはないですね。


ただ、京極堂シリーズは、まず妖怪ありきなわけで、事件の様相が妖怪に準えられたものなら、解明時のカタルシスはなくてもいいかなと、そうも思います。
もっとも今回は、『邪魅』に関する京極堂のウンチクがなくて寂しかったですが(涙)
『邪魅』自体、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』にあるだけで、他の書物には出てこないみたいなので、語ることがなかったのでしょうね。
その代わり、書評に関しての正しい認識を叩き込まれます(笑)
穿った見方をすると、京極先生の愚痴と捉えられなくもなかったり。


事件の根っこに、強姦事件があったのは、ちょっとやるせないですね・・・。
ていうか、京極作品ではちょっとお手軽に使われすぎているような気が・・・確かに、精神的ストレスを与えるには、もってこいの犯罪なのかもしれませんが・・・・・・。
縁談破棄の裏は、もうちょっと凝ってほしいなぁと思いましたが、そうなると更に分厚くなりそうな予感(汗笑)
そういえば、物語上一番の悪役の澤井は、一番最初に死んでいるのですよねぇ・・・。
つまり、それ以降の殺人は、善悪の観点で見ると無駄以外の何者でもなく。
そう考えると、本当に邪魅が感染していったのでしょうなぁ。
『純粋な邪』には、善も悪もありませんから。


京極堂の影が薄い分、何気に目立っていたのが関口さん。
益田の視点だったからかもしれませんが、今回要所要所で冴えているところを見せ、榎木津と対等の立場に立ったりと、頑張っていたと思います。
番外編の『百器徒然袋』では、ヘタレの極致だというのに(笑)
手前は、『姑獲鳥の夏』の関口さんとのシンクロ率が高かったためか、毎回関口さんを応援していたりします。


さて、次回は『鵺の碑』ですか・・・・・・何年待つことやら(笑)
鵺はきっと、京極堂が語ること満載でしょうから、楽しみです。