怪説『ゆきわらしの事』

まるちしんくさんにゲスト寄稿した、かみちゅ!SS『ゆきわらし』の解説です。
かみちゅ!は知ってるけど、雪童子とは何ぞや?という方のための補足に役立ってくだされば、これ幸いです。


さて、雪童子ですが、実のところあまり一般的な妖怪とはいえません。
何故ならこれは、宮沢賢治の創作妖怪なのですよ。
一郎と楢夫、という名前からピンときた方もいるかもしれませんね(笑)
この二人の名前も、宮沢賢治の小説から拝借したものです。


登場作品は、宮沢賢治の短編『水仙月の四日』です。
この話の中で、雪童子は雪童子(ゆきわらす)として、雪狼(ゆきおいの)と共に、雪婆ンゴ(ゆきばんご)の言いつけで吹雪を起こしています。


雪に関する怪異は、雪女や雪男、雪婆伝説などで数多く言い伝えられているので、ご存知の方も多いと思います。
童子と雪狼に関しては、それらしき資料が見当たらないので、既存の伝説から賢治氏が創作したのではないか、というのが短編に付記されていた解説者の見解です。


実際に手前が調べたわけではないですが、妖怪好きの一人の村上健司さんが纏めた『日本妖怪事典』にも載っていないところを見ると、どうやら宮沢賢治の創作で決まりのようです。


もっとも、広まる事がないまま、忘れ去られた昔話というのは数多くあるわけで、誰も知らないから過去、そういう怪異譚は無かった、と結論付けるわけにもいきません。
宮沢賢治がたまたま小耳に挟み、それを元に『水仙月の四日』を書いた、という可能性もあるわけです。
今は亡き方なので、真相は闇の中、なのですけどね。


ただ、『水仙月の四日』を読んだ時、雪童子が男の子を助けようとする姿が、あまりにも可愛らしかったので、いつかSSで書きたいなぁ、と思っていました。
そう、話を読み比べれば判ると思いますが、『ゆきわらし』は『水仙月の四日』のオマージュなわけです。
パクったわけではないですよ?(笑)かみちゅ!らしさも、ちゃんとミックスしてるつもりです。


さて、手前のように、自身の創作に取り入れられたり、既存の昔話の脚色などでに使われることによって、現世に甦ることもあるのが、妖怪の面白いところです。
加えて、宮沢賢治の作品は、今も多くの人に読まれています。
東北地方の方に住んでいる方で、『雪童子』に似た昔話や怪談を聞いた、あるいはこれから聞く方も、いるかもしれませんね。